ネット投稿をすぐ削除してもらうには?犯人特定のやり方も!

 SNS・ブログ・掲示板等の利用が一般化した昨今、「匿名で誹謗中傷された」「個人情報が晒された」等といったトラブルが急増しています。統計上でもトラブルの件数は高止まりで、インターネット上の人権侵害情報に関する事件数も平成29年に過去最高を記録しました(法務省報道発表資料より)。

もしもネット上で誹謗中傷や「晒し」の被害に遭った時、もちろん問題の投稿を速やかに削除させなくてはなりません。法的措置も含め、悪質な投稿にどう対処すべきか詳しく解説します。

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ネット投稿削除の基礎知識

投稿を削除する権限を持つのは、そのサイトを管理・運営する立場にある者です。悪質な投稿を見つけた場合は、上記削除権者を相手取って対応するようアプローチしなければなりません。

ここで押さえるのは、悪質な投稿・書き込みの被害に遭った時にまず理解しておきたい前提知識です。

悪質なネット投稿の例

削除すべき悪質な投稿とみなされるものには、いくつか種類があります。

注意したいのは、法的措置により削除させる場合、名誉・プライバシー・知的財産権等を対象とした明確な「権利侵害」が要件となる点です。そこで、投稿内容がどのように・どんな権利を侵害しているのか、きちんと説明できる状態にしておかなくてはなりません。

誹謗中傷 ・「気持ち悪い」「死んでほしい」等となじられる
でたらめな噂 ・「○○は詐欺をやっている」「○○と△△は不倫している」等とデマを流される
晒し行為※1 ・氏名、住所、電話番号、顔写真等の情報が書き込まれる
要配慮情報の公開※2 ・犯罪歴、逮捕歴等を公にされる

・性的画像を公にされる(いわゆるリベンジポルノ等)

知的財産権の侵害 ・音楽、動画、漫画等が許可なく使用される

・取扱商品の画像を勝手に使って宣伝している

【※1】個人情報の種類

生存する個人につき、氏名、生年月日、クレジットカード番号等の各種「個人識別符号」および写真や音声等の「特定の個人を識別することのできる」記録は、全て個人情報として保護されます(第2条1項)。

【※2】要配慮個人情報の種類

なかでも、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害に遭った事実および「その他の本人に対する不当な差別や不利益が生じる」個人情報は、取扱いに特に配慮を要するものとされています(法第2条2項)。

また、私生活の平穏を乱すような性的画像を流通させた場合、刑事罰を招来します(私事性的画像記録第3条)。

ネット投稿削除依頼の方法は3つ

誹謗中傷や晒しといった不愉快な投稿を見つけた時は、まず①サイトで公開される専用フォームから削除依頼します。「問い合わせ用のフォームがない」「依頼したのに対応してくれない」等といった場合には、書面や電話で直接サイト管理者と交渉して削除させなければなりません。

ただし、以上の手続きでの投稿削除はプロバイダ=サイト管理者の任意です。最終手段である法的措置として、②プロバイダ責任制限法に基づいて作成されたガイドラインによる依頼、もしくは③裁判手続を検討する必要があります。

事前に必ず「証拠」をとっておく

法的措置で投稿を削除させる場合には、明確な権利侵害を示す「証拠」を提出します。基本的には、被害者の端末に投稿画面を表示させて撮影したもの(=スクリーンショット)をとっておけば、削除依頼から投稿者の身元特定までの一連の手続きで使用できるでしょう。

と言っても、個別事案での証拠保全のやり方は、サイト毎に少しずつ異なります。手元で確保できた資料は、弁護士に使えるかどうか確認をとらなくてはなりません。

任意交渉によるネット投稿削除依頼

サイト管理者と投稿削除について任意で交渉する場合、審査で「違法性が高い」と判断された場合のみ対応してもらえます。問題は、審査のため削除までの日数が一定ではなく、対応を待っている間に情報が拡散して被害が大きくなる可能性がある点です。

以降ではサイトの様態別に自力で出来る削除依頼の方法を紹介しますが、実際には弁護士を通して交渉し、時間を置かず即刻削除するよう圧力をかけなければなりません。

SNSの場合(Twitter・Facebook等)

SNSの投稿を削除してほしい場合は、基本的に該当の投稿から「違反報告」をして対応してもらいます。依頼相手として多いのは、Twitter、Facebook、Instagram等の運営会社です。

上記報告による一般的な対応期間は2~3日程となり、その完了連絡は被害者のアカウントに通知される場合が普通です。対応してもらえた場合は、悪質な投稿者のアカウント自体がペナルティの対象となる可能性があり、その場合は利用停止処分(いわゆる凍結)がなされます。

ブログの場合(はてなブログ・Googleブログ等)

ブログの投稿を削除してもらいたい場合は、運営会社にメールまたは文書を送付しなければなりません。相手方として多いのは、はてなブログ、Googleブログ(Blogger/Blogspot)、Amebaブログ等の運営者です。なお、Googleのブログサービスについては、Webから依頼できるよう専用ページが設けられています。

【参考】Google運営のブログにおける削除依頼の手順

1 ヘルプにアクセス

2 “Blogger/Blogspot”を選択

3 報告の理由を選択

4 表示された報告専用ページに詳細を記述

ブログの場合、SNSに比べて審査対象となる投稿が長文になるため、対応期間は1週間程度と長くなるのが一般的です。Google運営のブログについて補足すれば、削除の要否米国内の独立調査プロジェクトに回されて精査されるため、いっそう時間がかかる可能性があります。

動画投稿サイトの場合(YouTube・TikTok等)

動画やそのコメント欄で中傷された場合は、SNSと同じく該当の投稿から「違反報告」して削除対応して削除対応してもらいます。近年増えているのは、YouTubeやTikTokに投稿された動画について対応してもらうケースです。

報告による審査期間は、2~3日程度から1週間以上までとまちまちです。そのため、削除までの日数の目安ははっきりと言えません。なお、違反が認められればアカウント自体が凍結される可能性がある点も、SNS投稿を巡るトラブルと同じです。

口コミサイトの場合(Googleマップ等)

個人商店等のレビュー・口コミで中傷されたような場合にも、報告して規約または法令に違反すると確認されれば削除対応してもらえます。具体的には、Googleマップや食べログに書き込まれた口コミが挙げられます。

一般的な削除期間の目安は、早ければ2~3日程度です。なお、Googleマップのレビューに関しては、「Googleマイビジネス」に登録しているか否かで報告方法が変わります。

【参考】Googleマップの削除依頼方法

Googleマイビジネスに登録あり:アカウント内の「クチコミ」から報告

Googleマイビジネスに登録なし:マップ上の該当レビューから報告

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ガイドラインによるネット投稿削除の措置

プロバイダ責任制限法には、悪質な投稿を残すことによる「サイト管理者等の損害賠償責任の制限」の定めがあります(第3条)。左記法律に基づき一般社団法人テレコムサービス協会が整備した「送信防止措置」のガイドラインによれば、被害者から依頼があった場合、サイト管理者側で削除対応しなくてはなりません。

肝心の送信防止措置の依頼は、書面のやりとりで行います。手続きにあたっては、ガイドラインで定められた「テレサ書式」が必要です。

引用元:プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト(名誉毀損・プライバシー関係の送信防止措置依頼書記入例)

送信防止措置の要件

先で解説した通り、投稿削除にかかる法的措置は「明確な権利侵害」が前提となるのが原則です。ただ、裁判外の手続きである送信防止措置に関しては、他人の権利が不当に侵害されていると「信じるに足りる相当の理由」(法第3条2項1号)があれば十分です。

送信防止措置の依頼から投稿削除までの期間

サイト管理者だけで前記要件について判断できる投稿なら、ガイラドラインに基づく依頼から1週間程度で削除されるのが一般的です。

上記判断が難しい投稿は、発信者=誹謗中傷等の投稿を行った人物に対して意見照会する運用になっています。実例の多くは発信者からの回答がないままとなっていますが、それでも7日間※の期限を過ぎれば、管理者権限で否応なしに削除してもらえます。

※性的画像をネット上で公開される等の被害は、回答期限が2日に短縮されます(私事性的画像記録等被害防止法第4条3号)。

裁判手続によるネット投稿削除の措置

裁判手続で投稿を削除させる場合は、実務上「仮処分命令」(民事保全法第23条2項))の申立てをする普通です。訴訟を起こすと和解または判決まで何か月もかかってしまい、刻一刻と被害が拡大するネットトラブルには向かないからです。

仮処分命令なら、権利侵害があると認められれば迅速に削除命令が出されます。後述のように、「仮」とあっても事実上の強制力があるのもポイントです。

削除の仮処分には「担保金」が必要

仮処分命令を申し立て、審尋で名誉毀損やプライバシー侵害にかかる「被保全権利」があると認められた場合は、担保金を法務局に供託しなければなりません(民事保全法14条1項)。供託すべき金額は事案の性質によりますが、30万円から50万円までの範囲が目安です。

なお、担保金は「サイト管理者が万一損害を被る時のためのプール金」との意味合いを持っています。そのため、通常は後日「担保取消しの手続」をとれば返還されます。

申立てから投稿削除までの日数

仮処分命令の申立てから投稿削除までの日数は、どの事案でも概ね1か月程度となります。少なくとも、強制執行の手続きに移行した時には速やかに削除されるでしょう。これまで命令に応じなかったサイト管理者につき、削除するまで裁判所が定める金額の請求が発生するようになるためです(民事執行法第172条・民事保全法第52条1項)。

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確実にネット投稿削除するための留意点

ネット上の書き込みを削除させる場合には、問題を確実に解決するため以下3つのポイントに留意しなければなりません。

対応を間違えれば、それだけ被害は拡大してしまいます。最初は当事者間のトラブルに過ぎなかったものでも、下手を打つことで「就職できない」「学校に通えない」「営業活動ができない」といった事態になりかねません。個別事案では、確実に問題を収束させるため、初動で素早く対応全体を取り決めておく必要があります。

実際には削除されていない場合がある

第1に留意したいのは、実際には「削除」と言える対応がとられない場合がある点です。

典型的なのは、Twitter等のグローバル対応コンテンツです。こうしたものに関しては、「削除」ではなく「非表示設定」とされる場合があるのです。つまり、国内からは投稿が消えたように見えていても、海外からはこれまで通り内容がまる見え……となっている可能性が否定できません。

以上の点を踏まえ、個別事案では投稿内容を「完全に削除」してもらえる方法を見極める必要があります。具体的には、任意交渉時に被害者の要望を明確にしておく、裁判手続で本案請求(=訴訟)を進める、等といった方法が考えられます。

検索エンジンでも非表示にしてもらう必要がある

第2に、たとえ投稿が完全に削除されても、Web検索すると画像あるいは文字として「キャッシュ」(=履歴)が見える可能性があります。つまり、悪質な投稿のあったサイトに対してのみならず、以下のように検索エンジンにも対応を求めなくてはなりません。

【Googleの場合】

原則として、サイト管理者からキャッシュ削除の依頼を遅らせます。ただし、個人情報が勝手に投稿されるトラブルでは、被害者自ら削除リクエストを送ることで迅速に対応してもらえます。

【Yahooの場合】

同じく、サイト管理者に「特定のウェブページを検索結果から削除」する手続きを取らせるのが原則です。ただし、個人情報が投稿される等の深刻な権利侵害では、被害者自らYahoo検索お問合せフォームから状況を伝えることで、迅速な対応が期待できます。

削除代行業者は利用しない

第3に留意したいのは、いわゆる「削除代行業者」や「誹謗中傷対応会社」の危険性です。確かに、士業報酬に比べて格安となるのは魅力です。しかし、これら業者によるサービスは、その多くが弁護士法72条に抵触する「非弁行為」となっているのです。

また、無資格で確実に依頼を達成できるとは到底言えません。「頼んだのに削除してもらえなかった」「見積りにはない高額な追加料金が請求された」等の消費者トラブルは、正確な数こそ把握されていないものの頻発しています。

以上を踏まえると、安いからといって資格のない業者に請求するのは禁物です。誹謗中傷・個人情報の無断投稿等の被害について相談したい時は、必ず弁護士をあたりましょう。

悪質なネット投稿者の身元を特定する方法

悪質な投稿によって実害が生じた場合は、もちろん損害賠償請求を含む断固とした対応が必要です。そのためには、投稿した人物(=発信者)の身元を特定しなければなりません。

「発信者情報開示請求」と呼ばれる身元特定の手続きは、削除と同じくサイト管理者に対応してもらうのが基本です。また、任意交渉・ガイドラインによる請求(法第4条)・裁判手続のうちいずれかの方法で進める点も、投稿を削除させる場合と同様です。

ただし、以下のような相違点から、投稿削除に比べて難易度が上がる点は無視できません。

身元特定まで2段階の手続きを要する

注意したいのは、サイト管理者からは「IPアドレス」や「タイムスタンプ」等といったアクセスログしか開示されない点です。そこで、第2段階として、アクセスログから分かる経由プロバイダ(携帯電話会社等)に対して契約者情報を開示させなくてはなりません。

経由プロバイダ等に対する訴訟手続が必須になる

第2段階である経由プロバイダへの請求では、基本的に訴訟を提起します。また、発信者情報は一定期間※が経つと削除されてしまうため、サイト管理者や経由プロバイダに保全させるための仮処分命令の申立も必要です。

【※参考】発信者情報の保有期間

目安として投稿から3か月~6か月、海外のプロバイダだと2週間程度となります。

ネット上の誹謗中傷投稿の削除を弁護士に依頼するメリット

ネットにおける誹謗中傷被害の体験談の中には、「自力で投稿削除に対応してもらえた」というものも少なからず見受けられます。

しかし実際には、証拠保全や法的措置を進める上で、弁護士でないと対応できないケースがほとんどです。仮に自力で対処できるとしても、弁護士に任せることで以下のようなメリットを享受できます。

考えられる一番短い日数で削除が完了する

弁護士による任意交渉では、法的措置の予告をする等して速やかに削除するよう圧力をかけられます。その効果は高く、早ければ1両日中の削除も期待できます。

ガイドラインによる削除請求、あるいは裁判手続が必要な場合でも、代理弁護士により書面準備等をスピーディに行われることで、その事案における最短期間での解決が望めます。

損害賠償請求までの法的措置がスムーズ&確実になる

悪質な投稿を巡るネットトラブルは、削除と発信者情報開示に成功すれば終わりというわけではありません。その後には、同じことを繰り返さないよう誓約書にサインさせたり、損害賠償請求したりする等の対応が控えています。これらの対応が終わるまでは、時間を意識しながら法的措置を繰り返さなくてはなりません。

弁護士に任せる場合は、以上のような長い道のりをスムーズにこなせます。

最大の懸念事項となるのは、解決時の措置が不十分でトラブルが再発したり、相手が弁護士を立ててくる等して言い逃れられたりする可能性です。より恐ろしいのは、被害者の情報を明かしすぎてしまうことによる報復行為でしょう。2018年にはブロガーが面識のない誹謗中傷の加害者に殺害される事件も起こっており、注意しなくてはなりません。

弁護士を通す対応なら、上記のような心配は無用です。適切な処理ができる代理人を挟むことで、ネットトラブルを今回限りとしつつ、プライバシーを保護しながら解決できるのです。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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